ネットワークシステムの評価軸

[研究開発の目的]にもあったように、本研究は複数機能によって形成されるネットワークに対して、評価分析手法と最適システムの自動構築方法の確立を目指しています。

ではここで言う「最適」とは何に対しての最適なのでしょうか。ここにはさまざまな見方、つまり評価の軸が存在しています。たとえばコスト。これは低ければ低いほど顧客が満足するため、「最適はゼロ」だと判断してくれます。しかし当然コストという評価軸だけではなく他のさまざまな評価軸が存在し、総合的にネットワークシステムが設計されていくべきものです。

そこで本研究では、ネットワークシステムの構築にかかわる評価軸には以下のものがあるとしました。

  • コスト
  • 処理速度(性能)
  • 拡張性
  • セキュリティ

さらにセキュリティに関しては、以下の3つに細分します。

  • 可用性
  • アクセス制御
  • 脆弱性の影響

これら評価軸は、当然トレードオフの関係にあるものも多いでしょう。コストや処理速度(性能)などはその代表的なものといえます。トレードオフの関係が多く存在する評価軸の中、なにが最適であるかを判断するのは、本来では顧客自身が行うものです。しかし、顧客自身もどのような評価軸が存在するかは明確にはわかっておらず、コスト至上の評価を下すことも多くあります。その中でセキュリティという評価軸は、現状ではコストメリット・デメリットが見えにくい部分もあり、特に軽んじられています。

本研究の特長は、このセキュリティという評価軸に重点を置いて設計の最適性を全体的に論じる、というところにあります。

新たなネットワークシステム表現モデルの必要性

では実際に全体最適を定める場合、どのような評価を行えばよいでしょうか。それには評価対象となるシステムがどのような構成になっていて、どのように関連しているかを知る必要があります。

ネットワークシステム物理接続図

ネットワークシステム物理接続図

そういったネットワークシステムは、通常その構成情報はテキストなどによりデータ管理され、そしてその関連性つまりネットワーク構造は物理的な接続図で表現されます。このように、評価すべき対象のシステムは単一のデータではなく、複数のデータにより複合的に構築あるいは管理されています。しかしこういった複数にデータが分散する手法は、データ間の整合性に問題が生じることが多くあり、さらにデータの加工や再利用が困難であることから、自動設計や自動管理の実現を妨げるものとなっています。

そこで本研究では、ネットワークシステムを1つのデータとしてすべて表現するモデルを新たに構築しました。
このモデルを使うことでデータ間の不整合や再加工の困難性が排除され、自動設計や自動管理の検討が行えることとなります。