レイヤ構造

ネットワークシステムは、さまざまな機能を提供する機器より構成されます。それら機器が提供する機能の例として、Hubによる電気信号の中継や、Switchによるスイッチング、ルータによるIPルーティング、Webサーバによるサービス提供などがあります。それぞれの機器が持つ機能をOSI参照モデルに照らし合わせると、例えばSwitchによるスイッチングはレイヤ2、ルータによるIPルーティングはレイヤ3での経路制御を行うものであることが分かります。同時に、Webサーバへのアクセスを行うクライアントから見たレイヤ7でのサーバ-クライアント通信では、途中にあるルータやスイッチングハブを意識することはありません。このように、ネットワークシステム内の各機器が提供する機能により、各レイヤ毎に論理ネットワークを組むことができます。

そこで本モデルでは、機能面で識別するための「レイヤ」概念を取り入れます。本モデルにおけるレイヤは、ネットワークシステムで用いられうる機能すべてを過不足なく表現するためにTCP/IPの4レイヤに物理的接続のレイヤを含めた5つのレイヤに分類しました。 Layer1は物理的な筐体、Layer2はイーサネットレイヤ、Layer3はIPレイヤ、Layer4はTCP/UDPレイヤと定義し、最後に抽象サービスレイヤとしてLayer5を定義しました。なお、ここでいうサービスとは、HTTPやSMTP、DNSなどを指しています。

ノード

各レイヤにおける通信の終端あるいは中継点となる要素を「ノード」と定義し、その性質によって以下の2種類に分類されます。

  • 終端ノード
  • 中継ノード

終端ノードは通信の始点あるいは終点になります。

中継ノードは、通信を行うにあたり終端のアンデンティティ情報からデータ配送可否の判断や通信経路の決定を行うノードです。Switching機能における宛先MACアドレスに従った通信ポートの決定などがそれにあたります。

ノードは3つの属性を持ちます。レイヤ情報、終端/中継ノード種別情報、そしてアイデンティティ情報です。アイデンティティ情報とはシステム内で一意に認識されるための情報であり、上の図にあるようなIPアドレスやMACアドレス、ポート番号などが適用されます。

リンク

ノード間を結ぶ要素をリンクと呼び、以下に示す3つの種類があります。

  • 通信路リンク
  • 依存関係リンク
  • 中継リンク

上記3種のリンクはそれぞれ向きを持ちます。

通信路リンクは同一レイヤでの異なるモジュール(モジュールについては後述)に属するノード間を結ぶリンクであり、当該レイヤでの通信路を示すものです。通信路リンクの向きは通信の方向を示します。

依存関係リンクは、依存関係があるノードを結ぶリンクであり、基本的にはレイヤ間を結びます。ただし、応用モジュールに示すように、同一レイヤ間のノードを結ぶ場合も存在します。依存関係リンクは依存ノードから被依存ノードへの向きを持ちます。

最後に、中継リンクはモジュール内で同一レイヤの中継ノード間を結ぶリンクです。中継リンクの向きは中継の方向を示します。

モジュール

ネットワーク機器の機能を提供するものをモジュールと呼びます。モジュールはノードと依存関係リンク、中継リンクにより構成されます。モジュールはその機能により以下の3つに大別されます。

  • サービスモジュール(S)
  • インターネットモジュール(I)
  • 中継モジュール
    • レイヤ1中継モジュール(L1R)
    • レイヤ2中継モジュール(L2R)
    • レイヤ3中継モジュール(L3R)
    • レイヤ4中継モジュール(L4R)
    • レイヤ5中継モジュール(L5R)

サービスモジュールはWebサーバやDNSサーバ、SMTPサーバなど、サービスを提供するモジュールです。また、他のサービスモジュールに対するクライアントになることも可能です。

インターネットモジュールはシステムの外部全体(インターネット)を代表するモジュールであり、サービスモジュールに対するクライアントになります。

中継モジュールは、各レイヤでの中継を実現するモジュールであり、4種類があります。 L1Rはたとえば、Hub機能がそれにあたります。またL2RではSwitching機能、L3Rはルーティング機能であり、L4RはNAPT機能、L5Rはプロキシ機能などが該当します。

基本的なモジュールとノードの関係として、各モジュールは必ずL1に1つのノードを持つと決めます。L2以上のノードに関しては、モジュールの機能により 変化します。たとえばL1Rの場合、L2以上では通信の始点・終点・中継点のどの機能も果たさないため、L2以上ではノードを持たないモジュールとなりま す。同じくL2Rでは、L2で中継機能を果たすためにL2にノードを持ちます。その個数はモジュール自身が持つMACアドレス数やNIC数により決定されます。しかしL3以上では通信に直接の参加はしないためにノードを持ちません。 L3Rでは、モジュールが持つIPアドレス数に従いL3ノードの数が決まります。また、L2ではL3ノード数に応じたノードが配置されます。また単一モジュールの同一レイヤ内で複数のノードを持つ場合に、該当するレイヤにおいてそのモジュールが経路制御を行う場合に、モジュール内の中継ノード間に中継リンクが発生します。これは、L3RのL3などがそれにあたります。